千葉県出身。 商業用のカレンダーや雑誌、新書などの表紙を飾ることも多く、活躍は多岐に渡る。 |
■ペーパークイリングとは 細く切った紙を巻いてパーツを作り、そのパーツを組み合わせて様々な形に仕上げるペーパークラフト。 中世時代のヨーロッパの修道女が本の端を切って、宗教的用具の飾りを作ったのが発祥とされる。
※『ボタニカルクイリング』は植物(ボタニカル)をモチーフとしたクイリングの一種。
まるで本物の植物と見紛うほどに、多彩に表現されたボタニカルクイリング作品を多く制作されている小紙先生。作品作りにはコピックが欠かせない、という小紙先生にコピックインタビューをさせていただきました。
コピックは重ね塗りで無限に色を表現できるのが魅力
― コピックを使い始めたきっかけと時期を教えてください。
小紙先生(以下、敬称略):コピックと出会ったのは、デザイン系専門学校の時に教材の一つとして支給されたのが最初でした。コピッククラシック36色セットかな? でもあまり授業では使いませんでした。
本格的に使い始めたのは、手芸関係のカタログを制作しているデザイン事務所にデザイナー兼イラストレーターとして入社した後、通販カタログに掲載する商品のレシピ(説明書)の図解を描くのにコピックを使用したのがきっかけです。
当時はアナログが主流でしたので、「線画をコピーして塗り絵のように描ける」「コピーのトナーが落ちない」「間違えてもすぐやり直せる」というコピックに感心した覚えがあります。水彩絵の具と違って乾くのも早いですしね。
― ペーパークイリングはいつ頃から始められたのでしょうか?
小紙:その会社で海外クラフトであるペーパークイリングのキットを販売する事になり、カタログに掲載する作例を作ったことがきっかけで始めました。最初は市販のキットを使用していたのですが、当事の社長からオリジナルのキット製品の企画を任され、オリジナルの作品を作り始めました。作り続けるうちに作品が集まったので出版社に売り込んでもらい、本を2冊出版しました。
― その時からコピックを使われていたのでしょうか?
小紙:いいえ。その時には市販のクイリング専用紙を使用して作っていました。
コピックをクイリングに使用し始めたことも、ボタニカルクイリングを始めたことも独立してからです。
― どのような経緯でコピックをクイリングに使うようになったのですか?
小紙:最初は市販のクイリング専用紙で作品制作をしていましたが、海外製だったため色が日本的ではないというか……ビビッドすぎて、微妙な表現や雰囲気が出せませんでした。
次に日本製の色紙(いろがみ)を使用してみましたが、今度は自分の表現したい色が見つけられなかったんですね。色幅はあったのですが、例えばピンク色といっても5、6色しかなかったので、求める色を表現できなかったのです。
そこで「コピックがあるじゃん!」と気がついて試しに塗ってみたら、自分の思い通りの色や雰囲気が出せたので、コピックを使用したクイリング制作を始めました。
コピックは重ね塗りで無限に色が表現できるのが良いですよね。それがコピックの魅力だと思います。準備や片付けも楽ですし。(笑)
重ね塗りでちょっとしたニュアンスや奥行き感を出す
― コピックで好きな色はありますか?
小紙:好きな色は植物が綺麗に表現できる色ですね。花を塗るならブルー系やピンク系の薄い色を混ぜたりするので、V000やBV00が好きです。緑系だとYG01やYG11、G82はマストです。G40も切らしたら大変。あ、YG03は最近の流行です。(笑)
― 作品制作の際はどのようにコピックを使用するのですか?
小紙:あまり単色では使わずに、ほとんど重ね塗りをして使用しています。最近はアンティークっぽい雰囲気を意識しているので、明るい色に別な色を重ね塗りして、くすんだ表現を出しています。
例えば、これがYG01だけで塗った葉っぱ(画像内:左側)で、こっちがYG01にV000を塗り重ねした葉っぱ(画像内:右側)なのですが、違いがわかりますか?
― 重ね塗りをした葉っぱのほうが、落ち着いた緑色になっていますね。
小紙:はい、重ね塗りをするとちょっとしたニュアンスや奥行き感が表現できるようになります。1個1個のパーツだと違いがわかりにくいと思うのですが、それらを組み合わせることで雰囲気のある作品に仕上がります。
― 制作時に使用している紙を教えてください
小紙:水墨画の練習用の紙を使用しています。和紙売り場で1枚1枚触って選びました。
白くて若干のテクスチャがある水彩紙のような感じですね。柔らかいけれどほどよいハリがあって、厚さもちょうど良いのでお気に入りです。
もちろんコピックとの相性もよく、発色がとても綺麗なので愛用しています。
― 小紙先生ならではのコピックのテクニックはありますか?
小紙:ならでは、ではないかも知れないのですが、やはり重ね塗りですね。必ず重ね塗りはします。
花の場合は、もともとの花の形が綺麗なのでただ塗っただけでも美しいのですが、葉っぱは自分で雰囲気を演出しなければ美しくならないんです。
葉っぱを塗る時は1枚1枚に微妙な色の差をつけたいので、塗る速度を調節しています。同じ色でも速く塗って薄くしたり、ゆっくり塗って濃くしたり……あとは塗り重ねる順番でも微妙なニュアンスが変わってきますね。わざと色ムラを出して塗る場合もあります。
それらが合わさると立体感が出て、ナチュラルな雰囲気のある作品になるわけです。
色彩計画をたてる
― 作品の設計図などはあるのでしょうか?
小紙:作品を作る前にデジタルでラフを描きます。ラフを描いたあとは色彩計画をたてて、細かい配色まで決定します。そうすると制作中に悩まなくても済みますし、制作に没頭できますので。
それに色彩計画の段階で完全にバランスを取って納得しておくことで、完成品に色の妥協をしなくて済みます。
色見本も作品毎に新しく作っています。コピックのインク残量や、スーパーブラシニブの劣化具合などの理由で色が微妙に変わりますので、確認も含めて色見本を作りますね。
コピックを使用する前は「ここはこの色の紙を使って・・・・・・」など市販の色紙に縛られてラフを描いていましたが、コピックはラフで描いた色をそのまま再現できるので、かなり自由になりました。自分の作品では「色」がとても重要なので、色彩計画をたてること、色見本を作ることは毎回必ず行っています。
― 確かに、お話を伺っていると色へのこだわりを強く感じます。
小紙:例えば葉っぱの緑色にしても、同じものは一つとしてないので、00番や000番などを使い分けて緑色の差を表現しています。また、紙の種類や、紙を巻いてから色を塗るのと、塗ってから巻く場合でも色の表現が変わりますので、自分の表現したい色や雰囲気に近づけるために妥協はしません。
ボタニカルクイリング・ジャパン(※1)の教室などで、コピックを使用して作品制作をしている生徒の方にも必ず「色の表現は妥協しないほうがいいですよ。」と言っています。
※1 ボタニカルクイリング・ジャパン株式会社コレスポンドが運営している、クイリングの会。植物をモチーフとしたペーパーアートの講座・イベント・出版等を行っている。
ちなみに左が市販の紙で作ったパーツ、右側がコピックで塗って作ったパーツです。ポップな作品なら市販の紙で十分ですが、この雰囲気を表現するのはコピックを使用しないとできません。
― ずいぶん印象が違いますね!
小紙:はい、私の求める色や雰囲気を表現するのにやはりコピックは必須です。
― 最後に、コピックに対して一言をお願いいたします。
小紙:30周年おめでとうございます!コピックのおかげで、今の私が在ります。これからもよろしくお願いします!
コピック30thキービジュアル制作の様子
2017年に迎えたコピック30周年をお祝いする作品として小紙先生にキービジュアルを制作していただきました。馴染みがない方も多いクイリング制作の様子を動画でじっくりご覧いただけます。コピックを使用したグラデーション着彩などは必見です!